9月10日、ふくしま共同診療所の杉井医師医師をお招きして、「福島の"今"を聞く会」を練馬文化センターにて行いました。
あの3・11福島原発事故からちょうど6年半。福島の状態はよくなったでしょうか。まったく違います。
なのに、2020年オリンピックを前に原発事故なんて「なかったこと」にしてしまうかのように、マスコミの報道が極端に少なくなっています。
そうした状況に危機感をもってか、宣伝は十分ではなかったにもかかわらず、40人近くの方が会場に集まってくださいました。
厚く御礼申し上げます。

杉井さんのお話は、医師としての経歴に踏まえての思い、そして毎週福島に通って診療を続けての実態をリアルに語ってくださり、会場からため息や「そうだよ」などの相づちが打たれるような1時間余りでした。
質疑応答では、南相馬・避難20ミリ撤回訴訟に関わっておられる方の熱い訴え、街頭で福島のことを訴え続けている方からの質問などがあり、杉井さんの「こんな福島の被ばくの状況で東京オリンピックなんてやるのか、というのが多くの地元の思いだ。五輪用の建設資材が優先されて、福島に必要な物が行かなくなっている。東京オリンピックなどやるべきでない」との言葉に、期せずして拍手が沸きました。

詳しい講演要旨などは次回載せるとして、今回はNAZENいけぶくろ代表の五條敦さんの開会あいさつを掲載します。
原発を中心に、安倍政権が進める戦争・改憲情勢まで含めてのアピールです。

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私は、NAZENいけぶくろ代表の五條と申します。NAZENというのは「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」の略称で、福島第一原発の大事故のあった2011年の8月に被爆地の広島で結成されました。
全原発の廃炉、被曝労働の拒否、保養・避難運動の推進、国際連帯、そして今日、講師にお招きした杉井先生が診療に当たられている「ふくしま共同診療所」の建設と発展を5つの柱として活動しています。
全国各地域で支部的な組織が自主的に活動していて、私たちはNAZENいけぶくろとして、この練馬区や文京区、豊島区、北区、板橋区など東京北部地域で活動しています。

明日、9月11日で、3.11から6年半になります。安倍首相がIOC総会で「アンダーコントロール」と大ウソをついてオリンピックを誘致したのが2013年の9月でしたから、あれから4年が経過したことになります。
この間、川内、伊方、高浜の5基の原発が再稼働されてしまいました。あろうことか、今、原子力規制委員会は、田中俊一委員長の退任を前にして、東京電力の柏崎・刈羽原発6、7号機について、再稼働の前提となる審査で「合格」の最終判断をしようとしていると報じられています。

福島第一原発については、デブリの撮影に成功したとか凍土壁を全面凍結するとか愚にもつかない宣伝が繰り返されていますが、いまだにアンダーコントロールどころではない状況が続いていて、廃炉など不可能であることは明らかだと思います。
子どもの甲状腺ガンは3月末までに152人が確定していて、「疑い」を含めると190人となっています。中には3巡目の検査で判明した人もいます。しかもこれがすべてではなく、県が把握していない患者がいることも明らかになりました。もちろん健康被害の問題は甲状腺がんだけではないし、子どもだけでもありません。そんな中、自主避難者への住宅支援の打ち切りなど、福島への帰還を強制しようとする動きには、ほんとうに目に余るものがあります。

安倍政権は2年前の9月19日、いわゆる戦争法を強行成立させました。その根拠となった2014年7月1日の閣議決定の正式名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」といいます。
安倍は、どこまでもアメリカに、今はトランプに追随し、憲法9条を変えるとまで言い出して、国民を守るために日米同盟を深化させるなどと繰り返しています。8月29日に北海道のはるか上空を北朝鮮のミサイルが通過したときは「これまでにない深刻かつ重大な脅威だ」などと言って、北朝鮮の脅威を煽り立てています。オスプレイの方がよほど危険なのに、何度事故を起こしても飛行の差し止めさえできないでいます。8月10日には小野寺防衛相が、北朝鮮がグアムに向かって弾道ミサイルを撃った場合、それを「存立危機事態」と認定して自衛隊のイージス艦から迎撃することは法的に可能だと述べています。
しかし、敗戦後の日本がほんとうに存立の危機に陥ったのは、福島第一原発の事故のときだったと思います。もし4号機の使用済み燃料プールが倒壊したり干上がったりしていれば首都圏から3千万人が避難しなければならなかったと言われていたあのときの恐怖を忘れることはできません。

これからも地震は起こるし、噴火や大規模な風水害も避けられません。今、フロリダでは巨大ハリケーンに備えて2カ所、4基の原発が停止されているそうです。2~3日前からは太陽フレアの危険性も指摘されています。人為的なミスもありうるし、ミサイルが撃ち込まれたりテロに見舞われたりする可能性もゼロではありません。北朝鮮のミサイルはもう10年以上前から日本全土を射程に入れています。北のミサイルを恐れるなら、頭に手をやってしゃがみこむ訓練をするより、原発を止めることが必要です。

ほんとうの意味で「国の存立」を全うしようとするなら、すべての原発をなくさなければなりません。再稼働など論外です。ましてや新設など絶対に認められません。しかし、最近の報道によれば、日立がイギリスで建設する予定の原発について、政府系金融機関を通じた支援に加えて、メガバンクが日立に融資する数千億円の資金を政府が全額補償することを検討しているそうです。これが正しい資本主義、自由経済のあり方でしょうか。原子力村の執念には、ほんとうに恐ろしいものがあります。

今日は、これから杉井先生のお話をしっかり学習して、NAZENの今後の活動に生かしていきたい、そして一日も早い安倍打倒、さらには原発の全廃に結び付けていきたいと思います。