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8月17日の改憲・戦争阻止!大行進東京北部実行委員会結成集会で、とめよう戦争への道!百万人署名運動東京北部連絡会の五條敦代表が提起したレジュメをダウンロードできるようにしました。

自民党総裁選を前に、安倍の9条改憲案をしっかり検討してみましょう。
「自衛隊明記」と「緊急事態」新設がいかにキケンかわかります!
職場で、地域で、友人どうしで! 津々浦々で学習会を広げていきましょう!


発議を許すな! 自民党改憲案の核心と安倍の改憲プラン


1.自民党改憲案の核心
① 9 条の 2:自衛隊の明記=9 条の無効化

【日本国憲法】
第 9 条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

【自民党改憲案・条文イメージ(たたき台素案):2018 年 3 月 24 日】
第 9 条の 2 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
(※ 第 9 条全体を維持した上で、その次に追加)

(1) 「前条の規定は、……を妨げず」との文言で、9 条に規定されている戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認が無効化される。
(2) 「必要な自衛の措置」に限定がなく、「自衛の措置」には「集団的自衛権」を含むことから、自衛隊の活動が際限なく拡大する。
(3) 「国民の安全を保つため」として、在外法人保護・救出を名目とした自衛隊の海外派兵が正当化される。
(4) 「自民党憲法改正草案(2012 年 4 月 27 日)」と比較すると一見穏当な内容に見えるが、事実上、その核心部分がほぼそのまま取り込まれている。⇒ 「国防軍」という名称が採用されずに「自衛隊」のままとなり、「審判所」(=軍法会議)の規定を欠いているだけ。

【自民党憲法改正草案:2012 年 4 月 27 日】
第 9 条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
② 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。
第 9 条の 2 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
② 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
③ 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
④ 前 2 項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
⑤ 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。
第 9 条の 3 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

② 73 条の 2、64 条の 2:緊急事態条項の新設
【自民党改憲案・条文イメージ(たたき台素案):2018 年 3 月 24 日】
第 73 条の 2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
② 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第 73 条の次に追加)
第 64 条の 2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の 3 分の 2 以上の多数で、その任期の特例を定めるこ
とができる。(※国会の章の末尾に特例規定として追加) 

(1) 「災害」 にだまされるな!
「災害」とは、法律上、「自然災害」だけを意味するものではない。
たとえば、「災害対策基本法」では、「大規模な爆発」や「放射性物質の大量の放出」が「災害」に含まれており、それらの原因がテロや戦争であっても「災害」と見なされうる。
また、「国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)」では、「武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害」を「武力攻撃災害」としている。
自民党改憲案で「自然災害」ではなく「災害」という用語が使われているのは、「自民党憲法改正草案(2012 年 4 月 27 日)」(次ページ)で掲げられた「外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」を含む有事全般を対象とするためであると考えられ、きわめて狡猾なやり口であると言うほかない。

【災害対策基本法】
第 2 条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1 災害 暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他その及ぼす被害の程度においてこれらに類する政令で定める原因により生ずる被害をいう。(後略)
【災害対策基本法施行令】
第 1 条 災害対策基本法(以下「法」という。)第 2 条第 1 号の政令で定める原因は、放射性物質の大量の放出、多数の者の遭難を伴う船舶の沈没その他の大規模な事故とする。
【武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律】
第 2 条 (前略)
④ この法律において「武力攻撃災害」とは、武力攻撃により直接又は間接に生ずる人の死亡又は負傷、火事、爆発、放射性物質の放出その他の人的又は物的災害をいう。

(2) 「政令」 に制限なし
「73 条の 2」は、内閣が法律と同一の効力を持つ「政令」を制定できるようにしようとするものである。
この規定は、国民が直接選挙した議員で構成される国会だけが法律を制定できるという仕組を破壊し、三権分立の意味を失わせる。
「内閣」を「天皇」に、「国会」を「帝国議会」に、「政令」を「勅令」に読み替えれば、「大日本帝国憲法」第 8 条の「緊急勅令」の規定と瓜二つの内容だが、「帝国議会」が「承諾」しないときは「効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ」と明記されている「大日本帝国憲法」の方がまだマシかもしれない。

【大日本帝国憲法】
第 8 条 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
② 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

戦前のドイツや日本で憲法の国家緊急権条項が濫用されたことを顧みれば、「73 条の 2」の危険性は明らかである。
とくに「政令」の対象に限定がないことは決定的な不備であり、令状なしの逮捕も、集会・デモやストライキの禁止も、都合の悪い文書の破棄も、そして新しい罪をでっち上げることさえも可能になってしまうことになる。
また、「政令」の制定、国会の承認の手続が明確でないことも重大な欠陥であり、曲がりなりにも閣議による「緊急事態の宣言」やそれを継続する場合の「100 日を超えるごと」の「国会の承認」等が規定されていた「自民党憲法改正草案」よりひどい内容となっている。

【自民党憲法改正草案:2012 年 4 月 27 日】
第 98 条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣
言を発することができる。
② 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に国会の承認を得なければならない。
③ 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、100 日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、100 日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。
④ 第 2 項及び前項後段の国会の承認については、第 60 条第 2 項の規定を準用する。この場合において、同項中「30 日以内」とあるのは、「5 日以内」と読み替えるものとする。
第 99 条 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。
② 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。

③ 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第 14条、第 18 条、第 19 条、第 21 条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。
④ 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。

③ 改憲を許せば? 「戦争できる日本」の完成
(1) 軍事中心の社会に変わる
この点について、石川裕一郎氏(聖学院大学教授、憲法)は、「とめよう戦争への道!百万人署名運動全国通信」第 246 号(2018 年 5 月 1 日)に掲載されたインタビュー記事「自民党〈自衛隊明記案〉を批判する」で、以下のように指摘している。

9 条に自衛隊を書き込むことの重大性は、自衛隊が対外的に戦闘するかしないかの問題だけではありません。
安倍政権は特定秘密保護法や共謀罪を安保法制とセットで成立させてきましたが、自衛隊を憲法で認めてしまうと、軍事にかかわることが社会の基底に置かれ、今の憲法下での日本の政治体制や市民社会のルールが変わっていく可能性があるのです。
まず、日本国憲法は、基本的人権の保障について、12 条で「公共の福祉のために」、13条で「公共の福祉に反しない限り」、29 条で「公共の福祉に適合するやうに」という限定を付けています。
これは他者の人権との衝突を調整する原理、および福祉国家の理念に基づいて経済的強者の権利を制限する原理として置かれているわけですが、自衛隊(軍)が憲法に坐ると、公共の福祉の中に軍事的な配慮が入ってきて、それで国民の基本的人権を制限するということが堂々とできるようになります。戦前はまさにそうでした。
侵略戦争に突き進む過程は「軍事的なるもの」を頂点にして、市民社会がそれに従属させられたわけですよね。学校教育体制も、産業も産業報国会として、家庭の男尊女卑的な家父長制もまさに軍事国家に尽くすための仕組みになった。徴兵制や物資等の徴発もそうです。
憲法学者の山内敏弘さんは、自衛隊を 9 条に明記すれば、自衛隊は憲法上の公共性を持ち、自衛隊の役務も兵役も「公共の福祉」に反しないことになると言っていますが、わたしもそう思います。
有事法制が作られたとき、地方公共団体とか、医療、交通、建設、運輸などの諸機関は労働者ごと有事=戦争の際の協力を強制される。国民保護法はそのためのものだと私たちは主張しましたが、それ以上の強権的な体制になるでしょう。
さらに、現行憲法では軍事裁判所(特別裁判所)は置いていないのですが、自衛隊が憲法に明記されれば、最高裁への上訴が可能であれば下級審に軍事裁判所が設けられる余地が出てくるということです。
抽象的な言い方をすると、軍隊には市民社会と別のルールがあって、例えば、命をかけて任務を遂行する、敵前逃亡してはいけないとかは普通の行政機関だったらありえませんが、堂々と軍隊になれば、海外に行くのは嫌だから辞めるってことも簡単にはできなくなったり、罰せられるようになるでしょう。

(2) 社会の軍事化はすでに始まり、ますます加速化している
上記のインタビューで石川氏も指摘しているように、社会の軍事化を支える仕組づくりは、有事法制(2003 年)をひとつの画期として、特定秘密保護法(13 年)、安保法制=戦争法制(15 年)、共謀罪(17 年)と、着々と進められてきた。国旗国歌法(1999 年)や教育基本法改悪(2006 年)もその一環として捉えられよう。いま、その総仕上げとして明文改憲が狙われている。
そして近年、「一強」と称される安倍政権下で目に余るのが、防衛費=軍事費の膨張と自衛隊の増長である。最近の報道から、それらを象徴する出来事を 1 つずつ挙げておきたい。

◆ 中国念頭に“空母”導入検討を首相に提言 自民(6/1:NHK NEWS WEB)
防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」の見直しに向け、自民党は、海洋進出を強める中国を念頭に、空母の役割を担う「多用途運用母艦」の導入を検討するよう求める提言を、安倍総理大臣に手渡しました。
自民党の安全保障調査会と国防部会がまとめた今回の提言では、中国が海洋進出を強め、南西諸島から台湾にかけてを「第 1 列島線」と呼んでいることを念頭に「列島線防衛」を掲げ、空母の役割を担う「多用途運用母艦」の導入を検討するとしています。
さらに、多用途運用母艦にも搭載できる短距離の滑走で離陸可能な最新鋭戦闘機、F35Bを取得することや、NATO=北大西洋条約機構が GDP=国内総生産の 2%の防衛費を目標としていることも参考に、十分な防衛予算を確保することを求めています。
提言を受け取った安倍総理大臣は、「安全保障環境が大きく変わり、装備の技術も革命的に変化している。国民の命と領土・領海・領空を守っていくため、大綱の見直しに向けて、しっかりと検討の参考にしたい」と述べました。
このあと自民党の中谷安全保障調査会長は記者団に対し、「『列島線防衛』を掲げ、日本列島をしっかりと防衛できる体制を作るための提言だ。日米協力や防衛省の体制強化、それに予算の獲得が必要だ」と述べました。

◆ 「お前は国民の敵だ」現職自衛官が民進・小西氏に暴言か(4/17:朝日新聞デジタル)
民進党の小西洋之参院議員が 17 日、現職自衛官を名乗る男性から「お前は国民の敵だ」と繰り返しののしられたと、参院外交防衛委員会で明らかにした。防衛省は、統合幕僚監部に勤務する自衛官である可能性があるとみて調査している。(後略)
◆ (社説)自衛官の暴言 訓戒処分では軽すぎる(5/11:朝日新聞デジタル)
幹部自衛官が、国民の代表である国会議員を罵倒する異常事態に対して、この処分は軽すぎる。防衛省は問題の深刻さを見誤っていないか。
統合幕僚監部に勤務する 30 代の 3 等空佐が、当時民進党だった小西洋之参院議員(無所属)に暴言を吐いた問題で、防衛省は 3 佐への懲戒処分を見送り、訓戒にとどめた。
懲戒処分は自衛隊法に基づき免職、降任、停職、減給、戒告の 5 段階。懲戒に至らない軽微な規律違反には、内規に基づく訓戒、注意が適用される。最も軽いのが、業務上の指導としての口頭注意だ。
訓戒は下から 3 番目に軽い処分でしかない。たとえば 16 年 1 月の参院予算委員会に、防衛省幹部 3 人が大雪で遅刻した時の処分も訓戒だった。3 佐の言動は、政治が軍事に優越するシビリアンコントロール(文民統制)の原則を明らかに逸脱している。それを遅刻と同程度の処分とはいかがなものか。甘い処分は統制を形骸化させ、将来に禍根を残す。
首をかしげるのは、処分の理由が自衛隊法 58 条の「品位を保つ義務」違反とされ、61条に定めた「政治的行為の制限」違反を認めなかったことだ。
防衛省の聴取に、3 佐は「国民の敵」とは言っていないと主張したが、「あなたがやっていることは日本の国益を損なう」「馬鹿」「気持ち悪い」などの発言は認めた。安全保障関連法に強く反対した小西氏について「政府・自衛隊とは違う方向での対応が多い」と認識していたという。これが「政治的行為」でないというのは、ふつうの感覚では理解に苦しむ。
そのうえで防衛省は、3 佐がジョギング中に小西氏と遭遇した際の「偶発的」「私的」な発言で「文民統制を否定するものではない」と位置づけた。
だが、3 佐は相手が国会議員と承知のうえで、自衛官と名乗り、その政治姿勢を公然と批判した。これを偶発的で私的な発言とみなすのは、事態の矮小化そのものだ。河野克俊・統合幕僚長が発覚後の会見で「文民統制に疑義が生じている」と語ったのは何だったのか。戦前、軍部が暴走した反省から、自衛隊には憲法や法律に基づく制約が課されてきた。ところが安倍政権は、その憲法や国会を軽んじ、批判的な野党を敵視する姿勢が目立つ。政治が生み出す空気が甘い処分の背景にあるとすれば、危うい。自衛隊への信頼の根幹を支える文民統制と政治的中立を、有名無実化させてはならない。

2.要警戒! 安倍の改憲プラン
① 改憲の手続はどうなっているか?
「憲法改正原案」(国会法上の用語)の国会への提出には、憲法審査会による提出と議員発議による発議の 2 つのルートがある。

出典:衆議院憲法審査会事務局「衆議院憲法審査会 関係資料集(平成 30 年版)」

【国会法】
第 68 条の 2 議員が日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)の原案(以下「憲法改正原案」という。)を発議するには、第 56 条第 1 項の規定にかかわらず、衆議院においては議員 100 人以上、参議院においては議員 50 人以上の賛成を要する。
第 102 条の 7 憲法審査会は、憲法改正原案及び日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案を提出することができる。(後略)

② 楽観は禁物! 何でもありの安倍政治
昨年 5 月 3 日、安倍首相は改憲派の集会に寄せたビデオメッセージで、「9 条 1 項、2 項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方、これは国民的な議論に値するのだろうと思います」、「2020 年を新しい憲法が施行される年にしたいと強く願っています」などと述べ、改憲への強い意欲を示した。
ただし、その後の憲法審査会の経過を見ると、昨年の通常国会では衆議院で安倍改憲メッセージの前に決まっていたスケジュールをこなしただけに終わり、冒頭解散が行われた臨時国会ではもちろん開催されず、総選挙後に招集された特別国会と今年の通常国会で実質的な審議が行われたのは参議院でのそれぞれ 1 回(昨年 12 月 6 日、今年 2 月 21 日)のみで、改憲案の議論は全くと言ってよいほど進展しなかった。
2020 年に確実に新憲法が施行されるためには、19 年 7 月の参議院通常選挙の前、あるいはそれと同時に国民投票が行われる必要があり、発議のタイムリミットは遅くともその 60 日前となることから、上記のような憲法審査会の状況、そして予算審議や統一地方選、天皇の代替わり等の政治日程から見て、安倍改憲プランの実現は不可能になったと見る向きもある。
しかしながら、憲法審査会でなく、議員の発議によっても「憲法改正原案」の提出は可能なのであり、改憲勢力にとって衆議院議員100 人以上、参議院議員 50 人以上というハードルはなきに等しいものである。
ここ数日の安倍や側近の下記のような発言は、そのことを前提にしているものと考えられる。

◆ 首相、改憲案「次の国会に提出を」 総裁選争点化に期待(8/12:朝日新聞デジタル)
安倍晋三首相は 12 日、地元・山口県下関市で講演し、自民党の憲法改正案について「次の国会に提出できるようとりまとめを加速すべきだ」と語った。「総裁選が、党員の間で議論を深め、一致団結して前に進むきっかけとなることを期待する」と述べ、総裁選で改
憲を争点にする姿勢を示した。
首相は自衛隊の明記や教育無償化など党の改憲 4 項目を挙げ、「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と主張。憲法 9 条への自衛隊の明記について、「全ての自衛官が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、政治家の責任。自衛隊をしっかり
と明記することで私はその責任を果たしていく決意だ」と意欲を示した。(太田成美)

◆ 「3 選の勢いで改憲へ」 自民・下村氏(8/16:朝日新聞デジタル)
自民党の下村博文・元文部科学相は 15 日、日本会議などが東京・九段の靖国神社で開いた集会で、9 月の党総裁選について「安倍晋三(首相の)3 選に向けた圧倒的な流れをつくり、その勢いで(今秋の)臨時国会で具体的な憲法改正論議に入っていかねばならない」と語った。自衛隊明記などを盛り込んだ党改憲案の「次の国会」への提出をめざす首相を後押しした。集会は「戦没者追悼中央国民集会」。衛藤晟一首相補佐官や佐藤正久外務副大臣らも出席した。

何しろ「何でもあり」の安倍政権のことである。やると決めたからには数の力で押し通す、(いまや絶滅危惧種だが)自民党内の良識派も公明党もいつも腰砕け、そんな光景を何度見せつけられてきたことだろうか。その最たるものが安保法制=戦争法の強行だった(思い返して怒りを新たにしよう!)。

安保法制=戦争法強行の経緯
○ 2013 年 2 月 7 日:安保法制懇(安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会)を設置
首相の私的諮問機関を公的機関であるかのように偽装、首相に近い「有識者」を集めた
○ 8 月 8 日:それまでの人事の慣行を無視して、集団的自衛権行使を可能とする憲法解釈の変更に積極的とされていた小松一郎駐仏大使を内閣法制局長官に任命
○ 2014 年 5 月 15 日:安保法制懇、憲法下での集団的自衛権行使を認める報告書を提出
○ 7 月 1 日:長年の政府憲法解釈を変更する閣議決定
○ 2015 年 4 月 27 日:安保法制を先取りする内容を含む日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を、法案の国会提出前に改定
○ 5 月 15 日:安保法制 2 法案を国会に提出、25 日衆議院で審議入り
○ 6 月 4 日:衆議院憲法審査会で参考人 3 人全員が安保法制は違憲であると表明、以後法曹界の重鎮(憲法学者、元最高裁長官・判事、元内閣法制局長官)から違憲との指摘が相次ぐ
○ 6 月 22 日:国会会期の 95 日間延長を決定、通常国会としては戦後最長の会期に
○ 9 月 19 日:未明に参院本会議で可決、成立
○ 10 月:参院特別委の議事録改ざんが判明(参院事務局が成立直後に作成した未定稿の議事録では「速記中止」「議場騒然、聴取不能」と記されていたが、「速記を開始」「可決すべきものと決定した」などの文言が加わっていた)
○ 10 月 21 日:野党が連名で憲法 53 条に基づく臨時国会の召集を要求、政府はこれを無視

改憲は安倍の悲願であり、今回、私たちは安倍が安保法制=戦争法強行時を上回るような強権を発動してごり押ししてくることを覚悟して立ち向かっていかなければならない。

③ もし発議されたら? 国民投票運動で圧倒的な優位に立つ改憲派
さて、もし私たちの抵抗もむなしく改憲が発議されたら国民投票の結果はどうなるだろうか?
そのヒントになりそうないくつかの世論調査結果を見ると……
◆ 憲法に関する世論調査結果 共同通信(4/26:中日新聞)
問 6 あなたは「戦争放棄」や「戦力の不保持」を定めた憲法 9 条を改正する必要がある
と思いますか、改正する必要はないと思いますか。
・改正する必要がある 44 ・改正する必要はない 46 ・無回答 10
問 8 (問 6 で「改正する必要がある」と答えた人に聞く)9 条を改正する場合、あなたが
最も重視すべきだと思うことは何ですか。(回答者 851 人)
・現在の自衛隊の存在を明記する 47 ・自衛隊を軍として明記する 14
・自衛隊による国際貢献を行う規定を設ける 12
・自衛隊の海外での活動が際限なく拡大しないよう歯止めの規定を設ける 24
・その他 2 ・無回答 1
問 12 憲法改正の議論では、大規模な自然災害や外部からの武力攻撃などの緊急事態に
対応するため、内閣の権限を強め、移動の自由など個人の権利を制限できる条項を新設
する案があります。あなたは賛成ですか、反対ですか。
・賛成 42 ・反対 56 ・無回答 2
問 13 緊急事態の場合に、衆院や参院の選挙が実施できず、立法府が機能しなくなる恐れ
があるとして、憲法上に「衆院 4 年」「参院 6 年」と明記されている国会議員の任期を
延長できるようにする案が検討されています。あなたは賛成ですか、反対ですか。
・賛成 32 ・反対 66 ・無回答 2
問 22 安倍首相は憲法改正に強い意欲を示しています。あなたは安倍首相の下での憲法
改正に賛成ですか、反対ですか。
・賛成 38 ・反対 61 ・無回答 1
問 23 安倍首相は、2020 年の改正憲法の施行を目指すとしています。自民党は憲法改正
の国会発議を今年中に行い、国民投票を経て 20 年の改正憲法の施行を目指しています。
このスケジュールに賛成ですか、反対ですか。
・賛成 36 ・反対 62 ・無回答 2
調査の方法:層化 2 段無作為抽出法により、1 億人余の有権者の縮図となるように全国 250
地点から 18 歳以上の男女 3 千人を調査対象者に選び、郵送法で実施した。
3 月 7 日に調査票を発送し、4 月 13 日までに届いた返送総数は 2040。有効回答は 1922。
回収率は 64.1%で、回答者の内訳は男性 49.0%、女性 51.0%。
東日本大震災の被災地のうちの 3 県に加えて、熊本県について一部地域を調査対象か
ら除いた。
◆ 報道 STATION・
ANN 世論調査
◆ 毎日新聞世論調査
(5/3:毎日新聞)

今のところ緊急事態条項については改憲反対が多数となっている(サンプルが「共同通信」だけなので確たることは言えない)が、9 条については賛否が拮抗している。
現在の国民投票法には広告の規制がほとんどないという重大な欠陥があり、世論調査に回答しない、あるいは「わからない」と回答する人々の多くは、資金力で圧倒する改憲賛成派が洪水のように流す TV-CM に影響されて「賛成」に回る可能性が高いのではないか。
楽観は許されない。発議を許したら一巻の終わりだというくらいの覚悟で闘うことが必要だと思う。