百万人署名運動ブログより
6月7日(水)14時30分から15時35分頃まで、今国会7度目の参議院憲法審査会が開催されました。第1回の4月5日以降この日まで9回の定例日がありましたが、審査会が開かれなかったのは4月19日と5月24日の2回だけということになります。
6月7日(水)14時30分から15時35分頃まで、今国会7度目の参議院憲法審査会が開催されました。第1回の4月5日以降この日まで9回の定例日がありましたが、審査会が開かれなかったのは4月19日と5月24日の2回だけということになります。
先週まで6回の審査会では参議院の緊急集会について4回、合区問題について2回の審議が行われ(コロコロ議題が変わる衆院審査会とは対照的です)、今回はその2つのテーマについて各会派の代表が1人10分以内で意見を表明しましたが、全ての委員が緊急集会の方に大半の時間を割いていました。
以下、この日の議事の注目点及び各委員の発言の要旨を報じた『東京新聞』のウェブサイトに掲載された2本の記事を転載させていただきます。
緊急集会 自民が「衆院任期満了時も」と見解 立民は「70日を超えても開催可」と主張 参院憲法審査会
『東京新聞TOKYO Web』2023年6月7日
参院憲法審査会は7日、参院の緊急集会を巡って各会派が意見表明した。自民党は憲法が衆院解散後と明記する開催時期について、衆院議員の任期満了時も含まれるという見解を示した。
緊急集会は、衆院解散後の緊急時に参院が国会の権能を代行する制度。自民は従来、任期満了時の開催には改憲が必要だと主張していたが、この日は山本順三氏が「一時的な衆院議員の不存在という意味では解散も任期満了も変わりはない」と述べた。
開催できる期間については、憲法が衆院解散から40日以内に総選挙を実施し、選挙の日から30日以内の特別国会召集を定めていることを踏まえて「70日間を大きく超えることは憲法の想定外」と指摘。総選挙の実施が長期にわたって困難になる事態に備え、議員任期延長規定の創設に向けた改憲論議を深めるべきだと主張した。
開催できる期間については、憲法が衆院解散から40日以内に総選挙を実施し、選挙の日から30日以内の特別国会召集を定めていることを踏まえて「70日間を大きく超えることは憲法の想定外」と指摘。総選挙の実施が長期にわたって困難になる事態に備え、議員任期延長規定の創設に向けた改憲論議を深めるべきだと主張した。
立民の杉尾秀哉氏は「一日も早い総選挙の実施を必須としつつ、70日を超えても開催できると解すべきだ」として、改憲に反対した。共産党とれいわ新選組も、議員任期延長のための改憲に強く反発した。(佐藤裕介)
参院憲法審査会の要旨(2023年6月7日)
『東京新聞TOKYO Web』2023年6月7日
7日の参院憲法審査会での発言の要旨は次の通り。
山本順三氏(自民)
一時的な衆院議員の不存在という意味では、衆院解散も任期満了も変わりなく、任期満了時にも参院の緊急集会による対応を認めうる。(期間について)70日間を大きく超えることは、憲法の想定外だ。緊急集会は有事の場合に活用できないものではないが、(憲法に)有事を想定した制度が十分に整備されているとは言えない。緊急集会に加え、緊急政令や緊急財政処分、議員任期延長について議論を深めるべきだ。
一時的な衆院議員の不存在という意味では、衆院解散も任期満了も変わりなく、任期満了時にも参院の緊急集会による対応を認めうる。(期間について)70日間を大きく超えることは、憲法の想定外だ。緊急集会は有事の場合に活用できないものではないが、(憲法に)有事を想定した制度が十分に整備されているとは言えない。緊急集会に加え、緊急政令や緊急財政処分、議員任期延長について議論を深めるべきだ。
杉尾秀哉氏(立憲民主)
緊急集会は1日も早い総選挙の実施を必須としつつ、緊急性を要する立法等を行う必要がある場合に限り、70日を超えても開催できると解すべきだ。緊急集会の根本趣旨に言及もないまま、70日間限定説を繰り返すのは、緊急集会を恣意的に曲解するものだ。(権力の)乱用排除の制度を破壊し、乱用可能な憲法改正を行おうとするものだ。わが会派は絶対に容認できず、任期延長改憲には明確に反対する。
緊急集会は1日も早い総選挙の実施を必須としつつ、緊急性を要する立法等を行う必要がある場合に限り、70日を超えても開催できると解すべきだ。緊急集会の根本趣旨に言及もないまま、70日間限定説を繰り返すのは、緊急集会を恣意的に曲解するものだ。(権力の)乱用排除の制度を破壊し、乱用可能な憲法改正を行おうとするものだ。わが会派は絶対に容認できず、任期延長改憲には明確に反対する。
西田実仁氏(公明)
民主的正統性を有する国会に戻す力は、緊急集会のほうが、任期延長等による国会よりも大きいと言える。衆院解散後または任期満了前後に緊急事態が発生した場合の対応策として2案が考えられる。緊急集会により対応し、可能な範囲で総選挙を実施するA案。緊急集会の議決による元衆院議員の身分復活や、国会の議決による任期延長で対応するB案。それぞれに論点、反論が考えられる。さらなる議論を望む。
民主的正統性を有する国会に戻す力は、緊急集会のほうが、任期延長等による国会よりも大きいと言える。衆院解散後または任期満了前後に緊急事態が発生した場合の対応策として2案が考えられる。緊急集会により対応し、可能な範囲で総選挙を実施するA案。緊急集会の議決による元衆院議員の身分復活や、国会の議決による任期延長で対応するB案。それぞれに論点、反論が考えられる。さらなる議論を望む。
音喜多駿氏(維新)
緊急集会を行えるのは70日以内で、その限界を理由の一つとして、緊急事態条項が必要だ。衆院解散後あるいは任期満了後に緊急事態が発生し、総選挙の実施が困難となり、長期にわたり衆院が不在となる場合を現行憲法は想定していない。長期の緊急事態の際(緊急集会に)国会そのものの役目を負わせる解釈は、もともとの制度設計にない過剰な役割を負わせるもので、極めて不自然な解釈になっている。
緊急集会を行えるのは70日以内で、その限界を理由の一つとして、緊急事態条項が必要だ。衆院解散後あるいは任期満了後に緊急事態が発生し、総選挙の実施が困難となり、長期にわたり衆院が不在となる場合を現行憲法は想定していない。長期の緊急事態の際(緊急集会に)国会そのものの役目を負わせる解釈は、もともとの制度設計にない過剰な役割を負わせるもので、極めて不自然な解釈になっている。
大塚耕平氏(国民民主)
衆院議員の任期満了による総選挙の場合に緊急集会を開くことについては問題ない。衆院解散と任期満了という原因に違いがあるとはいえ、衆院議員が存在しないという状況において違いがない。緊急集会を開催しうる期間は制約がないと考える。法の趣旨、緊急集会の目的に鑑みれば、衆院不在、衆院が有効に機能しない場合、緊急集会を開けるものとみなすのが合理的な解釈で、期間に制約を設けるべきではない。
衆院議員の任期満了による総選挙の場合に緊急集会を開くことについては問題ない。衆院解散と任期満了という原因に違いがあるとはいえ、衆院議員が存在しないという状況において違いがない。緊急集会を開催しうる期間は制約がないと考える。法の趣旨、緊急集会の目的に鑑みれば、衆院不在、衆院が有効に機能しない場合、緊急集会を開けるものとみなすのが合理的な解釈で、期間に制約を設けるべきではない。
山添拓氏(共産)
改憲は政治の優先課題として求められていない。だからこそ、憲法審査会を動かすべきではない。今国会では衆院議員の任期延長や緊急事態条項の創設など、憲法改正が必要ではないかとの意見が繰り返し出され、緊急集会を巡り、参院として考え方をまとめるべきとの主張までされた。国民の願いに背を向け、国会の多数派工作で改憲案の擦り合わせを図ろうとするもので、政治の役割を何重にも履き違えている。
改憲は政治の優先課題として求められていない。だからこそ、憲法審査会を動かすべきではない。今国会では衆院議員の任期延長や緊急事態条項の創設など、憲法改正が必要ではないかとの意見が繰り返し出され、緊急集会を巡り、参院として考え方をまとめるべきとの主張までされた。国民の願いに背を向け、国会の多数派工作で改憲案の擦り合わせを図ろうとするもので、政治の役割を何重にも履き違えている。
山本太郎氏(れいわ)
紛争や大規模災害に見舞われても、世界各国では選挙を実施し、有権者の参政権を保障し、民主主義を維持している。非常事態だからこそ、制約はあっても国民に1票を投じる権利を保障することが重要で、非常事態への対応を含め政権は国民からの評価を受ける必要がある。選挙ができない事態は政府が恣意的に認定することで生まれる。国民の審判を受けたくない政権に、選挙ができない事態を安定させてはいけない。
紛争や大規模災害に見舞われても、世界各国では選挙を実施し、有権者の参政権を保障し、民主主義を維持している。非常事態だからこそ、制約はあっても国民に1票を投じる権利を保障することが重要で、非常事態への対応を含め政権は国民からの評価を受ける必要がある。選挙ができない事態は政府が恣意的に認定することで生まれる。国民の審判を受けたくない政権に、選挙ができない事態を安定させてはいけない。
*引用、ここまで。
参院緊急集会の活用 一部の党は衆参で見解違い 参院憲法審査会
これは、この日の参院憲法審について報じた『NHK NEWS WEB』の記事(2023年6月7日付)の見出しですが、私の印象では衆参で見解が一致していたのは維新の会と共産党だけで、他の4党派(自民、立民、公明、国民)では多かれ少なかれ違いが見られました。
まず、自民党の山本順三氏は、上掲の『東京新聞』の記事で紹介されているように、「任期満了時にも参議院の緊急集会による対応を認め得ると考えている」と明言しました。
また、立憲民主党の杉尾秀哉氏は、これも『東京新聞』の記事にありますが、「会派を代表して意見を述べる」として、「憲法審の毎週開催で70日間限定説を繰り返すのは緊急集会を意図的に曲解するもので、乱用排除の制度を破壊して乱用可能な改憲を行おうとするものと断ぜざるを得ない。このような憲法尊重擁護義務と立憲主義に反する暴論は国民と参議院を愚弄するもので絶対に容認できず、任期延長の改憲には明確に反対する」と、今ひとつ煮え切らない発言の多い衆院審査会の同党の主要メンバーとは違って、曲解、破壊、暴論、愚弄など強烈な言葉を連発しながら意見を表明しました。
公明党については、前回の参院憲法審でも衆院の委員とは異なる発言がありましたが(興味のある方は、http://millions.blog.jp/archives/90761475.htmlをご覧ください)、今回も西田実仁氏は「参議院公明会派としての意見」だとの前提を置いた上で、「衆議院議員の任期延長による対応も、民主的正当性を考えれば長期間にわたる対応ができるかどうかは議論があり得るところであり、参議院の緊急集会との間で根本的な差異があるとまでは言えない。民主的正当性のある正規の国会に戻す回復力は、国会の機能を代行しているにすぎない緊急集会の方が、衆院議員の任期延長により衆参がそろう国会より大きいと言えるかもしれない」と述べていました。
大塚耕平氏(国民民主)の驚くべき発言
そして今回(いい意味で)いちばん驚かされたのは、大塚耕平氏の以下のような発言でした。
「衆議院議員の任期満了による総選挙の場合に緊急集会を開くことは問題ないと考える。
緊急集会を開催し得る期間については制約がないと考える。法の趣旨、緊急集会の目的に鑑みれば、衆議院が存在しない場合あるいは有効に機能しない場合は緊急集会を開けるとみなすのが合目的性の観点から合理的な解釈であり、期間に制約を設けるべきではない。
国会法101条では、参議院の緊急集会において議員は内閣総理大臣から緊急集会の請求の際に示された案件に関連のあるものに限って議案を発議できると定めているが、緊急事態に対応するという合目的性の観点からは議案に制約を設けることは適切ではないと思う。」
大塚氏は「合目的性の観点から意見を申し上げる」と述べた上で上記の見解を披露し、私は氏が自認しているように合理的な解釈だと思いました。ただ、衆院憲法審で玉木雄一郎氏が繰り返している発言とは全く異なる内容であり、代表(玉木氏)と代表代行兼政調会長(大塚氏)の見解がこんなに食い違っているこの党はどうなっているのかなとも感じました。
大塚氏は「合目的性の観点から意見を申し上げる」と述べた上で上記の見解を披露し、私は氏が自認しているように合理的な解釈だと思いました。ただ、衆院憲法審で玉木雄一郎氏が繰り返している発言とは全く異なる内容であり、代表(玉木氏)と代表代行兼政調会長(大塚氏)の見解がこんなに食い違っているこの党はどうなっているのかなとも感じました。
山本太郎氏(れいわ)の胸のすく発言
この日のハイライトは、最後に意見を述べた山本太郎氏の発言でした。
氏はまず「国民の投票権を制限しなければいけない非常事態とは一体何か」と問いを発し、「紛争や大規模災害に見舞われても、世界各国では予定どおり選挙を実施し、有権者の参政権を保障して民主主義を維持している」として、具体的な事例を列挙しました。その中から2つ紹介します。
▽ 2014年、クリミアをロシアに占拠され、東部で内戦と呼べるような状況が続くウクライナ。クリミアもウクライナの一部と認める以上完全な形での選挙ではなかったが、2019年、ウクライナは議会選挙を実施し、投票権は尊重された。
▽ 東日本大震災を上回る犠牲者を出したと言われる大震災のあったトルコ。復旧は道半ばだが今年5月には議会選挙と大統領選挙が行われた。エルドアン政権の震災対応を批判する有権者は野党候補の支持に回り決選投票にもつれ込んだが、エルドアン氏が非常事態を理由に選挙の延期や自らの任期の延長を図ることはなかった。与野党、自治体、NGOなどが協力し、ロイターによれば5月14日、避難者が地元の選挙区で投票できるよう数万台の無料バスを手配、通常は投票所となる学校が被災したためテントやコンテナによる仮設投票所を設置した。
そして山本氏は、次のように続けます。
「自民党や維新などが訴える選挙ができない状態とは何なのか。火星人の襲来かアルマゲドンか。選挙ができない事態とは、客観的に存在するというより政府が恣意的に認定することで生まれるものだ。国民の審判を受けたくない政権に選挙ができない事態を認定させてはいけない。
東日本大震災のような大規模災害時に求められるのは中央政府の権限の強化ではない。日弁連が実施したアンケートによれば、災害時には国ではなく市町村など自治体の権限を強化する必要があり、現行憲法に緊急事態条項がないことが災害対応の障害にはなっていない。緊急事態条項の提案は、被災地、被災者の意思を踏みにじり震災を利用する火事場泥棒的な行為だと言える。」
さらに追い打ちをかけるように、山本氏は「ときの内閣のメンバーが危機対応にたけた危機意識の高い人たちとは限らない。例えば歴代の自民党政権の幹部は、災害、ミサイル発射という危機のとき自らの選挙運動を優先し、ゴルフや酒盛りで遊びほうける常習犯だった」と指摘し、またも具体例を提示しました。
▽ 2021年10月19日、衆議院選挙中に北朝鮮がミサイルを発射した際、岸田首相と官房長官は選挙の応援で都内にいなかった。首相は第一報を受けた後、さらにもう1カ所、仙台の演説会に向かった。
▽ 2019年7月25日から29日まで、安倍首相が夏休みを取得していた初日、北朝鮮がミサイルを発射したが、首相はその約1時間後に別荘を出発しゴルフ場へ向かった。
▽ 2018年6月28日から7月8日にかけての西日本豪雨まっただ中の7月5日、議員宿舎で開かれた宴会「赤坂自民亭」には安倍首相、岸田政調会長、小野寺防衛省も参加した。官邸で関係省庁の情報を収集し指示を発するべき役割の西村官房長官はツイッターに宴会の写真を添付した。
▽ 2014年8月20日、広島市の集中豪雨に迅速な対応が求められていた状況で、安倍首相は朝8時頃からゴルフを始め、午後9時20分頃までプレーして11時頃官邸に到着した。
最後に、山本氏はこう述べて発言を締めくくりました。
「緊張感、責任感、危機管理という言葉とは無縁の大間抜けたちが非常事態を理由に自ら延命できるようになったらいったいどうなるのか。危機意識のない政府を選挙で退陣させることもできなくなってしまう。そのような不届き者が憲法を変えたいと言えないように先回りしているのが現行憲法であり、参議院の緊急集会だ。いまある憲法を守れ。それ以上でも以下でもない。
本審査会の時間を偏ったことに使ってほしくない。憲法審査会では、いまの社会状況の中で苦しんでいる人々のため、間違った政策を正すために違憲状態にある問題を話し合うべきだ。」
今回も、途中席を外す者はいたものの委員の出席率は高く、開会時から30分くらい、そして閉会の少し前から閉会時までは全員が出席していました。
傍聴者数は25人ほどでいつもと同程度、前回は1人しかいなかった記者は3、4人でした。(銀)